会議室やコワーキングスペースの共用部の予約・受付システムを開発、スタッフの省人化と非接触化を実現

三井不動産株式会社 様

プロジェクト概要

三井不動産が進める街作りプロジェクトにおいて
「新産業創造」の軸になる共有スペース管理システムを開発

交流を通じて新産業を生み出すイノベーション拠点「KOIL TERRACE」

公民学連携で街づくりを推進している柏の葉スマートシティプロジェクト。「環境共生」「新産業創造」「健康長寿」の3つの取り組みに対し、「新産業創造」を実現する「Smart&Well-being」をコンセプトとした多様な働き方に応えるオフィス「KOIL TERRACE」をオープン。企業や個人が集まり交流を通じて新産業を生み出すクリエイティブなイノベーション拠点を目指すインキュベーション施設です。

オフィス内でイノベーションを加速させる共有スペースの入退場管理システムを開発

「KOIL TERRACE」内において多様な働き方を実現する共有部の予約および入退場管理システムを開発。コワーキングスペースは会員証QRコードをエリアゲートで読み込むことでゲートの入退室記録から滞在時間を算出。入退場が自由にできます。ミーティングルームはサイト上で事前に予約をし、発行されたQRコードで入場。利用者のゲート通過時間を測定して使用した時間分の従量課金制を採用しました。
各共有スペースをQRコードにより、入退室管理することで受付の無人化を実現。テナントが賃貸借スペース内に確保していたスペースを共用部に持つことで、固定賃料を削減すると同時に空間を最大限に活用できる仕組みを実現しました。

「KOIL TERRACE」サービスイメージ
サービスイメージ
  • 課題・背景

    • 運用コスト削減のため、受付担当を置かずに施設運営(予約・入退場の管理)したい
    • 開発コスト削減のため、既存システムを転用し、必要機能のみ追加開発したい
  • 解決策

    • 予約管理のオンライン化
    • QRコードを用いたゲート・電子錠連動扉との連携
    • ゲート・電子錠連動扉を利用した入退場管理
    • 共有施設の予約・利用時間・利用料請求の連携
  • 効果

    • 共有施設の受付・運用を人員なしで実現
    • テナント企業の施設利用効率化

インタビュー

2021年1月に開業した柏の葉スマートシティの「KOIL」シリーズ新物件「KOIL TERRACE」において、会議室やコワーキングスペースの予約システムをご採用いただいた三井不動産株式会社の小林様、竹澤様のお二人に、柏の葉プロジェクトの全貌やシステム開発およびプロジェクト進行、今後の展開まで、その背景を語っていただきました。

柏の葉街づくり推進部
事業グループ 主事

小林 悟 様

DX本部DX二部DXグループ
技術主事

竹澤 美樹 様

柏の葉プロジェクト、柏の葉スマートシティとはどんなプロジェクトでしょうか。

柏の葉は「世界の未来像を創る街」をコンセプトに推進しているプロジェクトです。「環境共生」「新産業創造」「健康長寿」の3つの柱に基づいて様々な事業をおこなっており、街づくりを通して様々な課題を解決していくことで「世界の未来像」を具現化してまいります。

通常の不動産開発と比較して特殊なところは公民学連携で街づくりを行なっている点です。公は千葉県・柏市、民は我々のような民間企業・市民、学は東京大学・千葉大学という教育研究機関です。この三者が力を合わせる共創型のプロジェクトになっています。

その中で「KOIL」シリーズ、「KOIL TERRACE」はどういう位置づけになっているのでしょうか。

先ほどご紹介した三つの柱の一つに「新産業創造」があるとおり、柏の葉で新たな産業を興していきたいという思いがあります。

「KOIL」は「柏の葉オープンイノベーションラボ(Kashiwanoha Open Innovation Labo)」の頭文字。オープンイノベーションのハブとなる施設を目指し、開発いたしました。

2014年に竣工した一棟目の「KOIL」はソフト面が非常に充実しています。コワーキングスペースや3Dプリンターが使えるスペースなどを用意し、自らのアイデアを形にしていく起業家をターゲットにしています。

今回オープンした「KOIL TERRACE」は一番小さな部屋でも約30坪100平米あり、「KOIL」で事業をスタートした企業などが「KOIL TERRACE」に移り、大きく羽ばたいて行ってほしい、KOILシリーズを通してステップアップしていってほしいという思いが込められています。

柏の葉プロジェクトにエスキュービズムの提案が採用された背景や経緯はどのようなものだったのでしょうか。

柏の葉は「新産業創造」という柱があり、いわゆるベッドタウンではなく、産業をうみだす場所にしていきたいという想いがあります。一棟目の「KOIL」もおかげさまで稼働が高い状態で、さらに企業を誘致しここから産業を産み出すための受け皿となる器が必要になってきており、さらに単純なオフィスを作るだけでなく空間を最大限に活用してもらいたいというコンセプトがありました。

将来的にはオフィスワーカーだけでなく住民の方々にも会議室やコワーキングスペースを利用していただくことで、交流の場として常に稼働している状態にしたいと考えています。そのためのシステムとして、日本橋のmot.プロジェクト(https://client.s-cubism.com/case_mot-mitsui.html)でビル内設備の予約決済システム開発で実績のあったエスキュービズムの提案につながっていったという経緯です。

だた、もちろん既存システムの開発経験だけを評価した訳ではなく、前述したように「KOIL TERRACE」は様々な未来展開を想定したビジネスであるため、未踏破領域への積極的なチャレンジの必要も高いと考えていました。この点でも、ビジネススタンス、提案力、進めている仕事の方向性なども含めて、エスキュービズムが今回のプロジェクトにマッチしているという判断をいたしました。

弊社の提案・プレゼンはいかがでしたか。

既にmot.プロジェクトが実績としてあったため、RFP作成や要件定義の工程を一部簡略化できたことが良かった点です。

mot.のシステムをプラットフォームにすることで、コスト削減や開発時間の短縮による効率化といったビジネス的なメリットも生まれました。mot.プロジェクトによって三井不動産のビジネスをエスキュービズムが理解されていたことも大きく、意思決定には大きな時間を要すことはありませんでした。

柏の葉プロジェクトを推進される上で、どのような課題がありましたか。ビジネス⾯での課題、システム的な課題、それぞれ教えてください。

柏の葉はそもそもオフィスがない街でしたので、企業誘致をしようとしてもニーズがあるかどうかわからないというのがビジネス面での課題でした。しかし「公民学が連携した多様なプレイヤーがおり、自然環境豊かで都心からつくばエクスプレスで30分、駅前に様々な機能が揃ったコンパクトシティー」という紹介をすると非常に評価が高く、「こんな場所で働きたい」といったお声をいただきます。また、2020年からコロナ禍であるため、都心から分散したいというニーズが出てきて、今の時代にちょうどマッチしたともいえます。

従来入居企業様が賃貸借スペース内に確保していたスペースおよび機能を、当物件では共用部に確保することで、入居企業様は固定賃料を削減することが可能となります。これは先ほどお話した「効率的に空間を最大限に使う」ためにはどうすればよいか?という課題に対して考えた結果ですが、人的コスト削減や効率化、テナントや会員の利便性を追求した完全無人化を目指したシステムになっています。

無人化、つまり対人非接触のシステムを作ることで、省人化と感染症対策を同時に実現できたと考えています。

ただ現状は会議室やスペース使用後にスタッフが消毒作業を行わなくてはならないので、有人で運用しています。

コワーキングスペース(6階)
ミーティングルーム(1~2階)

プロジェクトの進行はいかがでしたか。

今回は建物とソフトウェアが分離発注だったため、ソフト面とハード面を連携して構築していく際に我々がハブにならざるを得なかったのが苦労した点です。発注者側として工事とソフトウェア開発の二重管理が必要となり、エスキュービズムからシステムに関する専門的な話を聞いた後でそれを翻訳して施工側に伝えなければならず、情報伝達、情報共有が困難でした。今後、こうした点でのコミュニケーション改善が必要でしょう。

もっともこれらは、内部で動くシステムと建物そのものが一括での契約であることが多いという建設業界特有の悩みであるのかも知れません。

それは今後、弊社としてもノウハウをつけていくべき業務領域ですね。では課題ではなく、進行上でここが良いと感じられた点などがあればお教え下さい。

既存ビジネスを理解している点以外にも、今後のビジネス展開を想定した、RFI作成レベルからお任せできたり、最初期段階のビジネス与件整理のアウトプットがリーンキャンパスであったりなど、可視化とビジネスターゲットの明確化に注力し、それらを上手く伝えてくれる会社さんだな、という印象です。

提案資料より抜粋

新しいシステム、仕組みのため、費用対効果やビジネスの組み立て方、概念などを社内に伝える際に困難な場面がありましたが、エスキュービズムさんのご協力のもとに突破口を作る事ができたと感じています。このアプローチをともに進めてくれる会社さんはなかなかないですね。

リリースされたシステムも同様です。お客様をご案内した時にデモンストレーションとして利用すると、使いやすく気持ちのいいシステムであることを感じます。説明した後の皆様にもご好評をいただきます。

また、自然も多くあり建物全体の空間デザインとハードを含めたシステム面がマッチして統一感があります。上質な空間で集中して仕事ができ、仕事場として高揚感のある仕上がりになっていると思います。

コンセプト段階からシステム整理をした効果が出ていると感じます。

ご検討されていること、今後エスキュービズムに期待していることはなんでしょうか。機能面で追加したいことやご要望はございますか。

プロジェクトとしては、今後は地域住民の方に向けての施設とシステムの開放を検討しています。

エスキュービズムさんに期待することは、ハード側との調整をお願いできればうれしいですね。同様の案件をパッケージにしてもらえると発注しやすいと思います。

今後の事業展開、業界内でのポジショニングや目指したい方向性を教えてください。

今後は柏の葉プロジェクトで作り上げたものを日本橋や日比谷、豊洲など他の街にも展開していこうと考えています。

不動産会社の強いところは「街を舞台に人をつなげる」ことだと考えていますが、単純にビルを貸す、家を建てて売るという事業から、データ利活用という世の中に移り変わり、サイバー空間まで入り込んでデータのプラットフォームを作るなど、不動産会社の枠を超えたプロジェクトに変化してきています。

プロジェクトメンバーでも不動産以外の仕事をしている人も多くいます。柏の葉プロジェクトのコンセプトである「世界の未来像」を具体化していくために、様々なアプローチで取り組んでいることの現れです。

今柏の葉で積み上げているものはアップデートされ、新しい仕組みや施設にフィードバックされるということですね。

おっしゃる通りです。昔はスマートシティといえば「エネルギーをどう効率化していくか」がテーマでしたが、現在は「データの利活用」に変化してきています。これからもどんどん変化し進化していく街であり続けたいと思います。

※2021年4月の情報です。
※取材は感染症予防のためオンラインで行われました。