POSシステムも企業ブランディングの一部。
アウトドア思想が反映されたプロジェクトで
DXを推進するスノーピーク

株式会社スノーピーク 様

プロジェクト概要

POSシステムからEC連携する事でオムニチャネルを実現。異業種新業態でも使用できるPOSシステムを開発

心地よく 自然指向のライフバリューをサポートするショップを展開

「自然指向のライフバリューを提案し実現する」という目的で、アウトドアを中心にした多角的な事業展開を行う株式会社スノーピーク。企業ブランドを体現するこだわりの空間作りとアウトドアに精通した専門スタッフがお客様のアウトドアライフをサポートする直営店を全国に33店舗、キャンプ場を6ヶ所運営(※注1)。キャンプをより身近に体験できるアウトドア商品を使ったレストランを店舗に併設するなど、ブランド力と商品力を活かした新規事業も展開しています。
エスキュービズムでは、これらの店舗で使用するPOSシステムを開発、スノーピーク社の成長戦略に合わせた形でのシステム活用で柔軟に運用いただいています。
※2021年2月現在

多様な業態に対応し周辺システムと柔軟に連携したPOSシステムを開発

エスキュービズムは、スノーピーク社が全国に展開するアパレル・アウトドアグッズ店舗、レストランやキャンプ場で使用するPOSシステムを開発いたしました。在来型のレガシーなPOSシステムでは周辺システムとの連携が柔軟に対応できず、顧客情報やポイント連携、在庫情報の一元化が進まず機会損失につながっていました。これらを改善するため、レガシーPOSシステムをベースとして情報の一元化が検討されましたが、連携する場合には、エスキュービズムのタブレットPOSレジシステムの新規導入コスト以上の費用が必要であることが判明し、断念することになりました。これによりエスキュービズムのタブレットPOSレジシステムでの全リプレイスが決定しました。
今回のリニューアルにおいては現ECシステムや基幹システムとの連携によるデータの一元化、顧客情報から受注情報などのチェックアウトデータの連携、各種のデータは共通DBを参照する仕組みとすることで、オムニチャネルシステムとして活用することを可能としました。
また「ORANGE POS」のカスタマイズ性を活かし、直営店での商品販売の他、レストランやイベントといった異業種新業態でも共通したシステムを使用できるようにするなど、柔軟なシステム構築を実現。今後、同社がチャレンジする様々な試みへ対応できるシステム環境を整備しました。

  • 課題・背景

    • 周辺システムとの連携に柔軟に対応できず、店舗の運用効率が下がっていた
    • 在庫など情報の一元化が進まず、店頭在庫の適切な引当が実現できないので、機会損失が発生していた
    • 飲食などの新業態に対応できていなかった
    • 店舗ブランディングを妨げないレジ導入が必要
  • 解決策

    • ECとPOSを連携し、会員ポイント、購買データ、顧客情報などのデータ連携
    • オムニチャネルシステムを構築
    • 基幹システムへの売上データ連携を実現し、管理の手間を最小化
    • ブランディングの一つの柱としてPOS開発プロジェクトを実施
  • 効果

    • 直営全店舗への新POS導入によるオペレーションの均一化。サポートコストの低減
    • 顧客データの統合、ポイントや購入履歴の集約によるよりスマートな接客の実現
    • リアルタイムでの在庫管理
    • 飲食、産直販売など新業態への対応
    • 今後の施策を支えるシステム環境の整備

インタビュー

「自然指向のライフバリューを提案し実現する」という目的で、アウトドアを中心にした多角的な事業展開を行う株式会社スノーピーク。企業ブランドを体現するこだわりの空間作りとアウトドアに精通した専門スタッフがお客様のアウトドアライフをサポートする直営店を全国に33店舗、キャンプ場を6箇所展開(※注1)。キャンプをより身近に体験できるアウトドア商品を使ったレストランを店舗に併設するなど、ブランド力と商品力を活かした新規事業も展開しています。

エスキュービズムでは、これらの店舗で使用するPOSシステムを開発、スノーピーク社の成長戦略に合わせた形でのシステム活用で柔軟に運用いただいています。株式会社スノーピークのBusiness Process Innovation 本部の飯田様、本間様、石沢様に、ブランディングとしてのPOS開発プロジェクトの開発経緯や今後の展望を語っていただきました。
※注1:2021年2月現在の情報

執行役員
Business Process Innovation 本部長

飯田 和正様

Business Process Innovation 本部
システムソリューション課

本間 里奈様

Business Process Innovation 本部 システム部 システムソリューション課
マネージャー

石沢 佑介様

スノーピークの持っている世界観で人生価値の向上を目指す

株式会社スノーピーク様の事業内容についてお聞かせください。

本間氏:スノーピークはアウトドアブランドの印象が恐らく強いかと思いますが、いま新しく「衣食住働遊」という人生を構成する5つのテーマに沿って様々な事業を進めています。「衣」はアパレル事業、「食」はレストラン事業、「住」は住宅のデザイン監修や住宅向けの製品の販売などを行っているアーバンアウトドア事業、「働」はキャンプで行う研修や自然を感じながら働く新しいワークスタイル提案などのキャンピングオフィス事業、「遊」は既存事業であるアウトドア用品の製造販売に加え、体験を重視したキャンプイベントやツアーイベントなどを新しく始めています。その他、地方創生事業やグランピング事業など、あらゆる方面からスノーピークに関わる方々の人生の価値を上げられるような取り組みを行っています。

飯田氏:スノーピークのコーポレートメッセージは「人生に、野遊びを。」です。人々が自然を感じられなくなっていることによって、人生の豊かさが失われているのではないか、文明の進化と共に何かを手放しているのではないか、という観点から、キャンプ事業、アウトドア事業が始まっています。しかし、一週間のうちの休日2日間だけではなく、オフィスがキャンプの要素を持っていたり、食事を外で摂ることによって心に余裕が生まれたり、といった日常に野遊びの要素を取り入れることで、すべての人生のライフステージに合わせてアプローチしていきたい、スノーピークの持っている世界観で世の中を良くしていきたいと考えています。
そのため、既存のアウトドアブランドのイメージから脱却し、ライフバリューを高めていくための事業が多方面で始まっています。

今回のプロジェクトが開始された背景・経緯を教えてください。

本間氏:店舗で利用していたレジが2011年に導入したもので、プロジェクトの開始時には既に導入から7、8年経過していました。経年の問題と、制約事項を解消してより業務を効率化し、顧客の満足度も上げられるようなPOSシステムを導入しようということでプロジェクトが始まりました。
制約の一つが基幹システムへの売上データの連携でした。旧システムでは一日一回の連携しかできなかったため、「すぐに売上を確認したい」という現場の要望に応えられていませんでした。また、売上時にポイント連携ができなかったため、会計後に別端末でもう一度商品を読み込んでポイント付与を行う二重操作が発生していたり、マルチ決済にも対応できていなかったりといった、多くの制約事項がありました。この制約事項を解消したいという課題を持っていました。

飯田氏:元々のレジはパッケージのため、パッケージの制約事項ありきで運用していましたが、お客様の満足度を上げる、社内の工数を減らす、という目的のために開発プロジェクトがスタートしました。また、プロジェクトが進むうちに、冒頭お話したスノーピークの新たな事業展開にもある程度対応できるPOSシステムとして考えていくべきなのでは、という話にもなりました。

プロジェクトを推進する上でどのような課題がありましたか。

本間氏:システム面での課題で今回一番大きかったのが、顧客システムとの連携をしなくてはいけないという点です。制約事項や様々な条件がある中で連携させなくてはならなかったことがとても苦労しました。また、コロナウィルス感染拡大の状況もあり、2021年3月に店舗での説明会を行って、4月に並行稼動という流れで進めていましたが、緊急事態宣言のため2ヶ月ほど店舗の休業期間がありました。店舗で実際稼働してみての課題の吸い上げが思うようにいかなかったこと、定着するまでに少し時間がかかったなということも課題になりました。

緊急事態宣言下の導入ではいろいろと影響が大きかったのではないでしょうか。

飯田氏:はい、完全切り替えではなく、リスクヘッジも考えて旧システムと並行で稼働ができるような移行体制をエスキュービズムさんにも協力をしてもらいながら実施しました。緊急事態宣言で出遅れたところはあるものの、完全同時の一斉切り替えではなかったため、融通がきいたのが良かった点です。

ビジネス面の課題では、POSレジが店舗のブランディングを妨げないようにすることでした。
休業せざるを得なかった期間は実は新店をたくさん連続してオープンさせるタイミングで、たとえば新規の商業施設の中で旗艦となるようなお店ということでスノーピークが出店を依頼されたパターンもありました。そうした新しいコンセプトの施設の中で使うのにふさわしい、タブレットベースでスマートなPOSレジにしていきたいという意図がありました。レジは全面的にブランディングに活かすイメージで、新しい店舗の雰囲気の中で違和感がないPOSにしたかったのです。
また、プロジェクトのセカンドステップにおいて、今度は持ち歩ける接客端末とPOSが一体化するという構想で動いています。ドロアの問題などもあるので、一旦ファーストステップは固定の場所でPOSとして使う形ですが、2台目の端末については新たな機能を追加し、進めていきたいと考えています。

POSシステムは顧客フロントの大事なブランディングの一つの柱

エスキュービズム、ORANGE POSを知ったきっかけと決め手を教えてください。

本間氏:プロジェクト発足時に、チーム全体でPOSのベンダーさんをインターネット検索で調べていて、その中の一つがエスキュービズムさんでした。その他、お付き合いのある企業さんにもお声かけしてご提案をいただいてもいました。
決め手は二つで、一つ目はベンダーロックがかからないというところ。弊社も様々な事業を行い、複数形態の店舗がどんどんできている状況で、柔軟に対応いただけるかどうか、という点を重要視していました。

飯田氏:我々もベンダーロックという問題を抱えていて、基幹システム系やECシステムなどいろいろな制約がある中で運営しています。エスキュービズムさんはベンダーロックをかけない、というリスクを抱えながらサービス提供、開発をされているところが、他社との違いとして評価した点です。

本間氏:もう一つの決め手は弊社の商品やサービスに興味を持ち、会社の目指す方向性に共感いただけていたというのも大きい点だったかなと思います。こちらの「こうしたい」という様々な要望に対し基本的にNOと言わず、柔軟に対応いただけて、熱意が伝わってくる提案内容でした。

モノづくりを行う上でブランディングが重要視される時代になっていますが、それはIT企業であっても同様と考えられますね。

飯田氏:POSシステムは顧客フロントの大事なブランディングの一つの柱だという思いが我々にはあります。スノーピークの本社でキャンプをしながら、各社の担当者とPOSプロジェクトのキックオフをしたくらい、ブランディングについての思いをチーム全員で共有してスタートしたほどです。
キックオフ時に本部長を務めていた村瀬(※注2)が「ブランディングはシステムをわかった上で構築するとその分強くなる。DX推進も単にシステムを作るだけではだめで、そこで動く人やそこに秘められたプランがシステムとしっかり合致しないとDXは絶対に成功しない」という考え方で、導入当初はそこがしっかりマッチングしていたと思います。
※注2:株式会社スノーピークビジネスソリューションズ 代表取締役 / 株式会社スノーピーク 専務取締役 村瀬 亮氏

実際にプロジェクトを進行していかがでしたか。

本間氏:開発の基本的な思想がウォーターフォール方式だったため、現場の要望に対して臨機応変に対応できなかったこと、設計のタイミングで標準パッケージの仕様をしっかりと把握できていなかった部分があって、特に管理画面の機能で制約があってできない機能が多く、後から柔軟に対応することができなかった部分が課題として残りました。

飯田氏:セカンドステップでは、アジャイル開発まではいきませんが、開発する前にディスカッションしてもう一度要件を決めるところからスモールスタートすることになっています。そこから設計に落としていく形で進めていきます。

サービスを開始して、実際に使われていかがでしたか。

本間氏:店舗スタッフからは、iPadで見たままにタッチして操作できるようになり、とても使いやすくなった、操作性が良くなったという声をたくさんもらいました。

飯田氏:フロント面の機能の評価はとても良いです。会計時のポイント連携もAPIで直接POSからコールする形にして、購入と同時にポイント付与されるので、現場での工数削減になっています。販売促進や顧客管理といった面では自由度が向上して、今まで使っていたレガシーPOSと比較して、機能性アップは図れたかなと思います。

本間氏:また、端末がモバイルになったことで、店舗でイベントを開催する時に増設して使用できるようになりました。今までできていなかったことができるようになったので、店舗運営の面でも課題解決できたところです

購買情報やアクティビティ情報などを収集した「野遊びデータベース構想」の実現へ

ご検討されていることや今後エスキュービズムに期待することなどあれば教えてください。

本間氏:ファーストステップでは割と課題を解決する内容のものが多かったので、セカンドステップでは新しい体制でより柔軟に新しいことに取り組んでいければなと思っております。今後はPOSに限らず、店舗まわりでのお客様との接点という観点で、よりスノーピークらしい店舗や接客のあり方を追求し、一緒に考えながら作っていければなと思っています。

オムニチャネルやOMOについては構想をお持ちでしょうか。

飯田氏:直近は、我々の課題はオムニチャネル化の方にあるかなと思っていますが、まだオムニチャネルもきちんとできてないので、それは次のステップでエスキュービズムさんとやりたい部分です。ただ顧客視点で見れば、オムニかOMOかは関係なく、お客様が最終的に満足するか、我々がどこを目指しているかを見極めてうえで手段を選ぶだけで、手段が先行しないようにはしたいですね。

今後、企業としてITを利用した事業展開や業界内でのポジショニング、目指したい方向性などについて教えてください。

本間氏:将来的に、 POSやECからの購買情報だけでなく、キャンプ場の活動情報など野遊びに関するあらゆるデータをグローバルで収集して野遊びデータベースを作ろうという構想があります。この情報を元にしたデータのプラットフォームを基盤として様々な企業と連携しながら、人生を豊かにするための体験価値を提供するコミュニティを創造していく、というスノーピークとしての方向性が示されていますので、これに向けて取り組んでいけたらなと思っています。まずは購買情報の精度を上げていくというのがPOS側の課題になってくるので、今後クリアしていきたいポイントです。

飯田氏:野遊びに関するデータベースを持っているところは世界を探してもまだどこにもありません。クライアント様に「人生価値を提供するためのこういうプロジェクトをやりたい」ということを相談されたら「スノーピークの野遊びデータベースからそのターゲットがどの程度いるのか探し出してみましょう」という案内をすることができるようになります。今後は我々日本法人だけでなく、アメリカ、イギリス、韓国、台湾も含めて全世界から情報が集まって、データを元にしたコミュニティを作り、様々な企業とどんどんコラボしていきたいなと思っています。

「日常に野遊びを取り入れることによって人生価値が高まり、より豊かに過ごせる」というのが我々の伝えたいメッセージです。我々の仮説では野遊びを求めている、人間性を回復したいと思っている方は都市部、文明国に多く、ITを中心に今世の中を引っ張っていっている人達が人生価値を見直してみる機会としてスノーピークの各事業が必要とされていると思っています。最終的に持続可能な社会や環境を作る契機として、アウトドアや野遊びがあると位置づけ、今後も様々な事業展開をしていきます。

※2021年8月の情報です。
※取材は感染症予防のためオンラインで行われました。

株式会社スノーピーク

1958年、“ものづくりのまち”新潟県三条市にて創業したアウトドアメーカー。「自然と人、人と人をつなぎ、人間性を回復する」ことを社会的使命とし、キャンプ用品、アパレルの開発、国内外での販売のほか、地方創生、ビジネスソリューション等、幅広い事業を展開する。大自然に抱かれたキャンプ場を擁する本社「HEADQUARTERS」を構える。コーポレートメッセージは「人生に、野遊びを。」

株式会社スノーピークhttps://www.snowpeak.co.jp/

株式会社スノーピークビジネスソリューションズhttps://snowpeak-bs.co.jp/