日本のお酒業界を盛り上げる
モール型ECサイトを短期開発でリリース。
パッケージ提供と開発支援が奏功
株式会社カクヤス 様
株式会社カクヤス 様
顧客の高齢化・若者の酒離れ・嗜好や生活習慣の変化・新型コロナウイルスの影響により厳しい状況下にある日本の酒蔵を応援し、酒蔵とお酒好きな方々を橋渡しするサイトを目指すECサイト。
全国の酒造メーカー、食品メーカーが出店するモール型ECサイトとして、出店料・月額費用なしで登録が可能。「なんでも酒やカクヤス」ネットショッピングサイトとのアカウント連携により145万人の会員を送客可能です。生産者の想いやこだわり商品との出会いによって「格別(カクベツ)」なひとときを提供します。
社会的情勢を鑑み短期でのリリースが目標だった同プロジェクトでは、約6ヶ月という短期開発に対応するためにEC-ORANGEの標準機能を最大限に活用。カスタマイズが軽微になるよう要件を精査して対応することで、単納期での構築を実現しました。
本店であるカクヤスと各店舗で機能権限を調整し、全体の運用と各店舗の運営を切り分ける要望通りのECモール運用が行われています。会員情報は「カクヤス」サイトに集約、連携により2サイトで共通化することで「カクヤス」サイトの既存ユーザーが流入しやすい仕組みに。
今後、サービス拡充のための追加開発を進めユーザーと出店者の双方に利用しやすいサービスを目指します。
「なんでも酒やカクヤス」のブランドを掲げ、酒類・食品等の飲食店および個人向け販売事業を展開している「株式会社カクヤス」。酒の専門店であるカクヤスならではの発想で、2021年7月、コロナ禍において厳しい状況下にある日本の酒蔵を応援するためのお酒とつまみに特化したモール型専門通販サイト【カクベツ】を新たにオープンしました。
モール型ECサイトのパッケージとしてエスキュービズムのEC-ORANGEを採用し、開発はデジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社が担当した「カクベツプロジェクト」。同社の新しい試みで日本の酒業界を盛り上げようと奮闘する株式会社カクヤスのeビジネス戦略部松原様、吉森様のお二人に、プロジェクトにかける想いやシステム開発で重視したことなど、経緯と背景を語っていただきました。
株式会社カクヤス様の事業内容についてお聞かせください。
吉森氏:カクヤスの事業内容は、国内でのお酒や食料品の販売事業及び、卸売事業となっています。店舗は東京23区を中心に横浜や大阪などに展開し、BtoCとBtoBの配達を行っています。BtoCでは店頭での販売以外に「なんでも酒やカクヤス」の店舗から1時間以内での無料配送、BtoBでは業務用センターから飲食店向けの配送を行っています。
カクヤスのブランド名「なんでも酒や」の「なんでも」とは、お客様のご要望に「なんでも」応えたいという、当社グループの意気込みや覚悟の表れです。そのため、お客様に一番便利だと感じていただけることを願い、「お酒を中心とした流通のインフラ」となることを経営方針として掲げています。
プロジェクトが開始された背景、経緯を教えてください。
吉森氏:日本酒、和酒は顧客の高齢化や若年層の酒離れによって、もともとダウントレンドにあったことに加え、新型コロナウィルスの感染拡大により、酒蔵さんや周辺業界では大変厳しい状況下にあります。そこで「酒蔵を応援することで日本のお酒業界を活性化し元気にしたい」という大きな目的から酒蔵のお酒とおつまみに特化したモール型の専門通販サイトとして「カクベツ」の立ち上げに至りました。コロナ禍という緊急事態のなかで、カクヤスとしてどうするか?何ができるか?ということを突き詰めて考えた結果、今回ECモール型の通販サイトという手段を採ることになりました。
ECモール型でやろうと決めた理由の一つとして、短期でのサービスインが目標だったことが挙げられます。2021年に入ってから具体的にプロジェクトが動き始め、7月にリリースすると決定しました。
カクヤスは東京都内だけでも120店舗近くの店舗があるため、1つの酒蔵さんが商品を卸したり我々が仕入れたりとなると、店舗分の発注や在庫管理に手間がかかるという課題が生まれ、プロジェクトがなかなか進まないと考えられました。酒蔵さんが出店し、自由に商品を選定して出品して、在庫管理も酒蔵さんの方でできるため、ECモールという手法を採用することになりました。
プロジェクトを推進する上でどのような課題がありましたか。
吉森氏:ビジネス面では、既存の「カクヤスネットショッピング」というBtoC-ECサイト上でのプロジェクトとは異なり、BtoBtoCというフローになるため、「カクヤス」と「ユーザー」の間に、新たにプロジェクトのステークホルダーの立ち位置の「酒蔵」が入ることによって、いろいろと連携や調整が必要だったところが苦労した点です。
松原氏:既存サービスとどう差別化していくのか、また取り扱う商材も課題としてありました。その解決策として、今まで取引のなかった酒蔵さんを対象として新規に営業を行い、「カクベツ」には「カクヤス」では取り扱っていない商品を置いています。結果として、目標値より想定していた3倍の出店要望をいただけています。
全体を通してプロジェクトは綺麗に進めることが出来ました。EC-ORANGEというパッケージを採用したことが良い面に働いたと思います。構築やリリースなど、全体的に大きな問題が起きなかったため、サービスを拡充する上で開発以外の営業や運営の部分にリソースを割けたというところが大きかったと思います。
EC-ORANGEを知ったきっかけと決め手を教えてください。
松原氏:今回のプロジェクトは、早期に立ち上げることを最も重視していました。パッケージを活用して納期を短縮したかったので、いろいろと検索して調査する中でエスキュービズムのEC-ORANGEの評価が高かったため、お声掛けしたという流れです。
そもそもECモールパッケージを提供している企業は数が少なく、我々がやろうとしていたマルチテナント型を実現できて一番実績がありそうだったのがエスキュービズムさんでした。
開発をお願いしていたデジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社(以下、DIT)の担当者さんとも相談しながら、こちらから「EC-ORANGEを導入したいです」と持ちかけて、ご対応いただいた形です。
納期を短縮するため開発を最小限に抑えられるように、一通りの機能があるパッケージとして選定しました。とにかくサービスを立ち上げてその後で開発していこうというスタンスでした。
今回、DIT社にて開発が行われましたが、進行などはいかがでしたか?
松原氏:DITさんには10年以上の長きに渡り保守対応を頂いているのですが、2年前に弊社のメインのECサイトをリニューアルしたことで協業関係がさらに深まったという経緯があります。今回はDITさんの方でEC-ORANGEの情報をキャッチアップし、いろいろとご対応いただきました。御社からの情報提供も適切に行われ、遅延なく、いつもの開発と同じように慣れ親しんだレベル感で開発進行できました。
DIT社に対する長年の信頼があったことと、EC-ORANGE側の開発サポートがしっかりしていたことで安心して進められましたね。
開発プロジェクトの進行はいかがでしたか?苦労した点やブレイクスルーポイントなど具体的なエピソードがあれば教えてください
松原氏:こちらで想定していたモールとしての見せ方が、EC-ORANGEの標準とは一部思想が異なっている部分がありました。これらのギャップを埋め、我々の考える機能にしていく、というカスタマイズを短時間で実施する必要がありましたね。その辺りが苦労したところでしょうか。例えばセッションに関わる持ち方などでこちらの想定との違いはあったのですが、こういった小さい仕様面でのギャップもさほど時間を要さずに埋めることができ、それほど大きな課題はなかったと認識しています。
DITさんから、御社が本店となって、各酒蔵さんを店子として連結するタイプのモール構想を実現するためには、ロール権限の機能をカスタマイズする必要があったとお聞きしています。
松原氏:はい。店子の酒蔵さんには運用をお任せし、我々は運営側としてサポートするための仕組みにしたかったという意図がありました。我々の想定仕様・機能に合わせるためには、EC-ORANGEではカスタマイズが必要だということはもともと聞いていましたが、今回は納期優先のためなるべくカスタマイズしないという方針でしたので、そこで若干のギャップが生まれてしまったのかなと思います。しかし、DITさんの方で御社とバックログで密にやりとりを行うことで、スピード感を持って課題解決ができたかなと思っています。
吉森氏:我々カクヤス側としては、プロジェクトとして一番苦労したのは納期だと思います。
2021年2月に「7月にモールをリリースさせる」というミッションが下りて、最初の打ち合わせでは「7月は無理ではないか?」という空気感だったのですが、なるべくカスタマイズを行わないことと、DITさんがエスキュービズムさんと素早く連携を取ってくれていたので、7月12日にオープンすることができました。
ブレイクスルーポイントとしては、後半は特に役割分担を明確にして、弊社内でも連携を取ってうまく進められたことが大きかったと思います。大きな落とし穴やネックになる問題などが発生せずに進んでいったので、逆にドキドキしていたくらいです。順調に進んだいいプロジェクトだったと思います。
松原氏:要件定義を含め半年で公開できたのは、進行管理がうまくいったことと、パッケージだったことですね。
DITさんのPMを担当された方が課題の切り分けが非常にうまく、やる・やらないをすぐ判断していただいて、納期最優先で必要な要素を抽出して進めることができました。そのおかげだと思います。
サービスを開始してみていかがでしょうか。機能面で満足している部分や実際に利用されているスタッフの方のコメントなどをお聞かせください。
吉森氏:今回EC-ORANGEでカスタマイズを行った、ロール権限の部分が細かく切り分けられているため、非常にスムーズに運用できています。我々カクヤス側と、出店者側で権限がきれいに分けられて、思った通りの機能になりました。
出店者様はECの商品登録などに慣れていらっしゃる方が多いのでしょうか。
吉森氏:出店者様がどれだけECサイトに関する知識をお持ちなのか我々の方でも図りかねるところでした。既に大手ECモールに出店されていた酒蔵さんと、そうでない酒蔵さんとでは経験値にどうしても差があったのですが、まずは経験値の高い酒蔵さんに対し優先的にお声がけさせていただきました。
EC-ORANGEの管理画面を酒蔵さんに提供していますが、操作方法についての質問はあまりないです。使い勝手も非常によく、運用側としては助かっていますね。
酒蔵さんたちもこの状況をどうにかせねばという強い危機感をお持ちで、ECを始められているところも増えています。現時点ではマンツーマンで説明しなければいけないようなケースはありません。
今後はECサイトの運営経験のない出店者様への利用促進とサポートを行っていくことを検討しています。
「カクベツ」で購入されているエンドユーザーの方の反応はいかがでしたか。
吉森氏:エンドユーザー様からのお問い合わせ、使い勝手に関する部分では特にありません。すんなり購入できているのではないかと思います。サポートチームにも確認をしていますが、使い方が分からないといった問い合わせはないですね。
「カクヤス」のユーザーIDがそのまま「カクベツ」でも使えるようになっているため、エンドユーザー様はカクヤスのファンのお客様が多いのも起因しているかもしれません。新規のお客様もゼロではないと思いますが、基本的にはカクヤスからの流入がメインになっています。
ご検討されていることや今後EC-ORANGEに期待することなどあれば教えてください。
松原氏:機能面では、売上などのレポーティング機能があるといいなと思っています。我々で全体的な売上などを見たりもしますが、店子さんごとにデータを見ながら販売戦略を立てることができますし、我々としてもマーケティング機能があることを売りにして営業がしやすくなり、サイト自体のサービス拡充につながると思います。
それからCMS機能があるといいなと思います。今は店舗ごとに編集できるページがトップページのみなので、店子さんでもちゃんと商品訴求ができるページが作れるととてもいいですね。
EC-ORANGEはカスタマイズで外部ツールなどと連携していくという思想だと思いますので、細かいユーザーからの要望を簡単に素早く開発側に伝えられる仕組みがあるといいなと思います。
今まではサービスインを最優先でやってきたので、細かいチューニングをこれからしていくために、気付いた時に気軽にメモのような形で開発側に送れたらよりスピーディーに改修ができるのではないかと思います。アジャイル開発とは少し違うかもしれませんが、今後も酒蔵さんとエンドユーザーさんにより良いサービスを提供していくために、走りながら改善を進めていきたいですね。
コロナの影響もあるのであまり待っていられない状況で、なるべく酒蔵さんの手助けになるようなことを我々としてもしていきたい、という形で考えています。
今後の事業展開、業界でのポジショニング、目指したい方向性を教えてください。
吉森氏:今後は生産者の想いやこだわりを、よりエンドユーザーにリーチさせるために動画コンテンツを駆使していきたいと考えております。
また、カクベツに出店されている店舗さんの珍しい商品を、カクヤスの宅配サービスに乗せることなどができると、「カクヤス」と「カクベツ」の利点の融合が起こり差別化され、より面白くなるのではと考えております。
※2021年8月の情報です。
※取材は感染症予防のためオンラインで行われました。