ロイヤルカスタマーを増やす接客体験を実現するDX
アークテリクス(アメアスポーツジャパン)様向け
顧客カルテ構築プロジェクト
アメア スポーツ ジャパン株式会社 様・トランスコスモス株式会社 様
アメア スポーツ ジャパン株式会社 様・トランスコスモス株式会社 様
全国に21店舗の直営店を展開するアメアスポーツジャパン様のブランド「アークテリクス」に向けた、顧客カルテ・店舗向け接客管理システムをエスキュービズムのパッケージシステム「EC-ORANGE」をベースに構築しました。 本プロジェクトは、アメアスポーツジャパン様、トランスコスモス様、エスキュービズムの3社による協業プロジェクトです。 本プロジェクトにおけるDX化は、単なる店舗業務の効率化や情報入力処理の迅速化を目的とするものではありません。ロイヤルカスタマーとのつながりをより深め、より深く理解することをアシストするための取り組みとして立ち上がりました。 ロイヤルカスタマーの皆様が感じる体験をさらに向上させ、より愛されるブランドとなるためのDXを、3社協業体制で実現しています。
散在していた情報を統合し、一元管理できるようにしただけでなく、店舗接客の現場で生まれるさまざまな情報も簡単に登録できる仕組みを整えました。
これにより、顧客の把握をより細かく行うことが可能となり、それらの情報を活用した多様なロイヤルカスタマー体験の向上を実現しています。
また、エスキュービズムのオムニチャネル領域における豊富な実績とノウハウを活かしたシステム開発により、お客様の情報を本部と接客の現場の双方で正しく把握できるようになりました。
これらの結果、ロイヤルカスタマーが感じる体験を、より価値のあるものにするための仕組みと工夫を詰め込んだプロジェクトとなっています。
DXは業務効率化を図り、データを新たに取得しマーケティングに活かす、などのよりアクティブな目標を実現するために実施されるイメージがありますが、
今回はブランドのアイデンティティをより強固なものにし、より丁寧な接客、在来よりもお客様の求めるロイヤルカスタマーとのつながりを強固なものとするための取り組みの一環として行われました。
本事例は、DX化がロイヤルカスタマーとの結びつきを強め、より上質な顧客体験を醸成した好例です。
アメアスポーツジャパン様、トランスコスモス様に、エスキュービズムとの三社協業プロジェクトについてお話を伺いました。
アメア スポーツ ジャパン株式会社
情報システム部デジタルCRMマネージャー
山﨑 徹也 様
トランスコスモス株式会社
CX事業統括 メタバース推進部 副部長 兼
DI事業本部 事業推進統括部 DIプランニング2部 部長
岩井 拓也 様
御社の事業内容について教えてください。
アメアスポーツジャパン
山﨑氏
(以下山﨑氏):
アメアスポーツジャパン株式会社は、70年以上歴史をもつスポーツ&アウトドアのグローバルグループ企業です。
10のブランドを100ヶ国以上で展開しており、日本法人ではスポーツ用品・機器及びその関連商品の製造、輸入、販売をアフターケアも含めて手掛けています。
今回はその中でも、多くのお客様に愛されている「アークテリクス」ブランドが対象となっています。
アークテリクスは、こだわり抜いたデザイン、クラフトマンシップの探求、フィールドで培われた品質、と極限のアウトドアフィールドでも街でもシームレスに活躍する機能性を備え、世界各国で愛され、評価されているブランドです。
今回のプロジェクトが開始された背景・経緯を教えてください。
山﨑氏:
本プロジェクトの背景には、弊社がD2C強化にシフトしアークテリクス直営店の出店スピードを早めていることが挙げられます。
3年ほど前から積極的に出店速度を早めており、現在アークテリクスは全国に21店舗を展開しています。
全国展開と並行して、会員プログラムも始めました。これは、お客様の購入金額に応じて、ディスカウントポイントが貯まるというプログラムです。
ブランドのアイデンティティを高めるようなアプローチも展開していきたいという計画もあり、顧客管理システムやよりよいポイントプログラムなどを考えている中、よりよいカスタマー体験はどのようなものなのだろう、ということからプロジェクトはスタートしました。
トランスコスモス
岩井氏
(以下岩井氏):
当社は、それらのご質問やご相談に、様々なノウハウやケイパビリティを活用してお答えさせていただきました。プロジェクトの初めに、「ロイヤルカスタマーを増やしたい」という方向性でご相談を頂戴したところから始まっています。
どのようなデータ設計をすればロイヤルカスタマー育成につながる良質な接客体験を創出できるのだろうかという検討からスタートし、データ整備と顧客接点に焦点を置くなど、やるべきことの方向性が見えてきました。
ここから、今回のシステム開発に至る過程で様々な検討事項がありましたが、「ロイヤルカスタマー」を増やすためのアプローチを「システムでどう実現するか」ということが最終的に大きなテーマになりました。
プロジェクトを推進される上で、どのような課題がありましたか。
山﨑氏:
現場とIT部門のFIT&GAPがまず初めの課題になりました。
というのも、クロスチャネルでプロジェクトを進めるのが、我々の会社としては初の試みだったからです。
ECは、もともとサイトやシステムといった無形のものを扱っていますが、リテールの場合は、POSレジ一つにしても実物に触れて決済を行なっています。
そのため、顧客カルテという全く新たな機能、UIを具体的にイメージするのは、容易ではありませんでした。
克服のために、まず早めにデザインを作ってもらい、現場に具体的なイメージを見てもらうことにしました。
デザインという視覚的な情報によって、文字でシステムを説明するよりも現場の理解が進み、スムーズにプロジェクトを進行できたと感じています。
プロジェクト開始からローンチまで、実際にプロジェクトを進行していかがでしたか。苦労した点や、ポイントとなった出来事などがあれば教えてください。
山﨑氏:
これまでの顧客管理ツールは、EC上でのみ稼働させるものという認識で、オンライン以外のチャネルでは顧客データを活用しきれていませんでした。
しかし、ご愛顧いただいているお客様に商品を継続的に販売していく上で、店舗体験や接客を通して得られた情報は非常に重要です。既にご購入されているインナーに適したジャケットのご提案や、
利用されるシーンに合わせたご提案など、店舗でしたいことはあっても情報が閲覧できない、などの課題も多くありました。
アウトドアユースはもちろん、タウンユースなどお客様のニーズが多様化し、それに対応できる製品ラインナップが整ったことで、より幅広い要望に応えられるようになりました。
その中には、「どのような接客を受けたいか」というニーズも含まれており、結果として接客に求められるスタイルも多様化してきています。
これまで、店舗のナーチャリングは属人的でスタッフ個人の経験に頼るところが大きかったのですが、これからは、オンラインとオフラインのチャネルでより精緻なデータを収集したいと考え、まずトランスコスモスさんに相談をしました。
岩井氏:
CXを上げるためには、顧客の体験価値を高めることと、現場の従業員のユーザビリティを担保することを同時に達成する必要があります。
その点、今回は現場スタッフ10名以上にインタビューを重ね、現場のユーザビリティに関してはかなり現実に即したものが仕上げられたという手応えがあります。
システム開発プロジェクトが具体化する前に、準備をしっかりしたことが、スムーズな進行のポイントになりました。
山﨑氏:
ECとリテール、各部門全体で「顧客ファースト」の意識をもって検討を重ねられたことも円滑なプロジェクト進行において重要でした。
今回のプロジェクトでは、目指すゴールとそこに至るルートがクリアで、これ以上ない形で着手から完了までを完走できました。
先日2024年11月に新宿店をオープンされました。導入した顧客管理システムを実際に使われていかがでしたか。機能面でご満足いただけている部分など、実際に利用した感想などありましたら教えてください。
山﨑氏:
現場スタッフからは、会員情報が整備されたことで、お客様の購入商品や来店頻度などが一目で見られるようになって接客の質が大きく向上したという声が、多数寄せられています。
これまでは、ポイント残高の確認など限定的にしか活用できていなかった顧客情報ですが、システム導入後は来店予約も管理できるようになり、ご予約のお客様に最適な商品をあらかじめ取り揃える余裕も出てきました。
こういった機能などを、パッケージとして大規模開発が必須となるわけではない仕組みを利用して、
早期に要件を確定、意思決定をした上でプロジェクトを進めることが出来たのは大きいメリットでした。
会員情報を接客の現場で扱えることで「お客様情報を確認しながら接客できる」ようになり、これから新たな接客スタイルを確立できるのではないかと期待しています。
3社(アメアスポーツジャパン様/トランスコスモス様/エスキュービズム)でチームを組んで進めたことで良かったポイントを教えてください。
山﨑氏:
業務の中でどんな機能があればいいのかを事前に洗い出すことで、短いプロジェクト期間を有効活用できました。
要件定義はアジャイル方式で、開発はウォーターフォール方式で進行しましたが、3社が方向性の認識をしっかりと共有することで、立ち止まることなく開発を進めていけたのが良かったポイントです。
特に、要件定義までをアジャイルで進めたことが、スムーズにプロジェクトを進行できた成功要因の一つだと感じています。
3社が事前に方向性をすり合わせたことで、スピーディに結果を出せました。
今回のプロジェクトでは、エスキュービズムが要件定義のタイミングでの齟齬をなくすために、早期に要件定義用のモックおよびプロトタイプを構築し、店舗やリテールの現場とのコミュニケーションを厚くしながら進めていくことが出来ました。
当然、システムの連携範囲として重要となる各種データの取得方法などのシステムとして必要な所はしっかりと抑えた上で、どのようなインターフェイスであれば、業務が上手く回るのか、どのような情報を用意すれば課題が解決するのかに時間をかけることが出来たため、在来のプロジェクトに比べて、比較的システム単独ではなく橋渡しの役目も実現出来たプロジェクトであると感じています。
岩井氏:
プロトタイプやモックを見ることで目指す方向性が明確になり、成果物に対する解像度が上がったことが、成功の要因ではないでしょうか。
顧客体験を向上させるためのDXは、弊社としても前例のない取り組みでしたが、3社が揃うことでよい結果が得られたという手応えがあります。
要件がしっかり確定していたことで、結果的にはシステムの開発プロセスも滞りなく、リスクなく進行しました。実感としてはどうでしょうか。
山﨑氏:
在来のプロジェクトで意識統一を図ることの困難であった、ECと店舗の認識齟齬を早期になくすことが出来たのが良かったと思っています。
システム開発の煩雑なプロセスの中でも、店舗・リテールのメンバーもどのようなモノが出来るのかを楽しみにしながらmtgに参加出来たということもありますし、
プロセスが非常にスムーズに進んだか故に、現場の意見を改めて聞く余裕でさえありました。
意識統一を図り、そしてカスタマイズしやすいパッケージであるということがプラスに働いたのだと思います。
今後、期待することは何でしょうか?
山﨑氏:
現場でのより良いシステムの有効活用について継続的な伴走をお願いしたいです。
アプリケーションに対する課題克服だけでなく、お客様を誘導する動線作りや、ブランディングに沿った最適な接客方法について、引き続きサポートをお願いしたいと考えています。
現在のアプリケーションで対応できるものであれば、都度抽出し、改めて要件定義をしてエスキュービズムさんに開発をお任せします。
EC
ORANGEはカスタマイズがクイックだったので、今後も同様のスタイルでの開発を期待しています。
具体的には、来店予約システムのネイティブ化や、商業施設に入っている店舗向けの会員サービスの開発が挙げられます。
商業施設に入っている店舗は完全な直営店ではなく、BtoBの側面もあります。さまざまな制約がある中で、すべての店舗とお客様がベネフィットを享受できるシステムの整備が理想です。
今回のプロジェクトも、概要の段階からかなり理想に近いものをご提出いただきました。これからもよろしくお願いいたします。
今後の御社の事業展開、業界でのポジショニングや目指したい方向性などをお聞かせください。
山﨑氏:
アメアスポーツジャパンは、引き続き顧客とブランドの丁寧な関係づくりを重視して事業を展開していきます。
一般的に、売上をあげるためには、滞在時間、回転率、面積あたりの売上といったショッピングの効率化を目指すことが重要とされています。
CRMやコンバージョン施策も重要ではありますが、弊社はブランドのアイデンティティとクラフトマンシップを大切にして、ブランドの愛用者、昔からのファンを大切に育成にしていきたいと考えています。
今後は、電子化されていない修理サービスについても、顧客カルテでアフターサービスの管理できるように計画をしています。
我々はいわゆるプレミアムアウトドアブランドに該当し、高価格帯の商品を扱っていますが、こうした商品を購入するお客様は、愛着をもって丁寧に使っていらっしゃいます。
ブランドとしてその丁寧さに寄り添い、今のアイテムを使った数年後に買い替えとなった時、再び選んでもらえるような企業であり続けるのが目標です。